時はコロナ禍。2022年4月6日。
普段からお付き合いのあるクリニックにワクチン接種にうかがうと、待合室にもう一人いた。何をしに来ているかはお互いに自明なので、ご挨拶してお声掛けしてお喋りして、注射ぶっ刺されるまでの時間を二人でやり過ごしていた。その時は、目の前に座っている初対面の方と、一年後にこんなプロジェクトを立ち上げることになるなんて、つゆとも思わずに。
その方こそ、ケア24高円寺（杉並区では地域包括支援センターのことをケア24と称しています）の黒田裕美子さんで、この『高円寺の縁側ぷろじぇくと』において欠かすことのできないスーパーサポーター女史なのです。
以下、その時の二人の会話。
黒田さん＝黒、筆者＝白、とします、他意はありません。
黒：「お隣の地区で、散歩中に休める椅子の設置活動してるんですよ」
白：「あー、そうなんですね。たしかにニーズ聞きますもんね」
黒：「高円寺でもそういった取り組みしたいなと思ってはいるんです」
白：「せっかく高円寺なら商店街巻き込みたいですよね」
黒：「そうなんです、どうせなら“高円寺らしさ”を出したくて」
白：「企画やってみましょっか？うちはデザインラボやってるんで」
黒：「デザイン？ラボ？訪問看護ステーションじゃないの？」
白：「同じ会社で両方運営してるんです、在宅ケア×デザインの協働をやりたくて」
黒：「？！！！」
白：「多分、高円寺ならでの仕掛けを着想できる気がします、やらせてください」
黒：「えー！じゃあ是非後日ご連絡させてください」
白：「是非！ただ今夜から祖父の葬式で群馬に行きますので、またあらためて…」
※これほんとに私の祖父が亡くなった当日だったんです。なので、葬式前にワクチン打つのもためらったのですが、強行して接種しに行った日にこんな奇跡のご縁をいただけたのでした。
こんな経緯の初対面から、こういう活動に興味がありそうな地域の方々に黒田さんがお声掛けしてくださり、今ではスポットで顔出してくれる方も含めると10人のチームになりました。
手前味噌ながら、私自身プロデューサーとして『縁側』というキーワードを閃いた時点で、「ふふ、勝った…」とほくそ笑みま、いや、自信を持ちました。
企画する時に、いわゆる高齢者向けや障害者向け、シルバーシート的なのは避けたいなというアタマがありました。もちろんシルバーシートを否定しているわけではありません。大切な場所です。
ただ、広い街中でひと休みしたいのはシルバーシートの対象になる方だけではないと思うんです。ベビーカー押しながらの買い出しで疲れた若いお母さんかもしれません。最近退院したばかりでリハビリ中のスポーツ選手かもしれません。家に帰るのが嫌になっちゃった小学生かもしれません。
誰もに、お休み処が必要な時がある。そう思ったんです。そして、そのお休み処は、疲れている人をさらに孤独にしてしまうものではなく、疲れている人同士で自然な気遣いや交流が生まれる、でもひとりでいたい時はひとりでいられる、そんな自由度のあるお休み処にしたかったんです。そうです、縁側です。「あ、そうだ！縁側を街中につくりまくっちゃえばいいんだ」。そんなことをあけっぴろげに思いついちゃった結果です。
とても幸せなことに、さすが高円寺とでもいうのでしょうか。地域の現場で働く支援職さん、もともと地域で活動をしていた協力員さん、そしてご賛同いただける店舗さんもすでにちらほら、このようなアイデアにノリノリでご参加してくださる方がたくさんいらっしゃいまして、リーダーの長井さんをはじめ「あそこの店よく知ってるから挨拶しとくね～」「あの店、椅子は置けないかもだけどポスター掲示で参加してくれそうだよ」などなど、言われる前に動くの当たり前、超積極的町民文化の頂点に君臨する「高円寺という街」のおかげで、無事本日を迎えることが出来た次第でございます。
なんといいますか、こういう地域活動はいわゆる「持ち出し」が多いのですが、高円寺の縁側ぷろじぇくとではそうは問屋が卸しません。自前のデザインでキャラクターをつくり、そのキャラクターをモチーフにしたグッズを販売し、活動資金を捻出していくつもりなので、大変言いにくいのですが、これを読んだ方で、メインキャラクターである「座る踊り子さん」がかわいいな素敵だなと感じてしまった方は、オンラインショップでいくつもお買い上げください。言いにくいんですけどね、言っておきますね。よろしくお願いいたします。
ではでは！
『高円寺の縁側ぷろじぇくと』が皆様の暮らしをより楽しく豊かにするものになりますように。そしてやがて名前から『ぷろじぇくと』が外れ、そのうち『高円寺』も外れ、全国どこでも街中での『縁側』が当たり前になりますように。誰もが誰もを思いやれて、誰もが安心して存在できる、そんな街が当たり前になりますように。そう願ってメンバー一同がんばって草の根活動をしてまいります。どうぞ今後ともよろしくお願いいたします！
『高円寺の縁側ぷろじぇくと』ウェブサイトはこちら→https://www.koenjinoengawa.net/
