あと6分

先週、いおりで長く訪問させていただいていたある利用者様がご逝去されました。
だいぶご高齢の方でしたが、かくしゃくとしていて、でもかわいらしく、スタッフたちみんなも大好きな利用者様でした。

たしか三年くらい前でしたでしょうか。スタッフのひとりがカンファレンスでの何気ない会話で「M様は絶対にいおりで最後まで寄り添いたいです」とのをおぼえています。
なので、M様がご逝去された翌朝、そのスタッフと会った時に「昨夜はお疲れさま。約束した通り最後までケアさせていただけたね」と声を掛けました。

だいぶ泣き続けていたみたいですが、それでもまだまだ泣けてくるみたいでした。
そのスタッフにとっては、まだ訪問看護の右も左もわからない頃からのお付き合いで、いわば成長を見守ってくださった利用者様/先生でもあります。

わたしたちケアワーカーは、たとえ国家資格があろうとなかろうと「現実の/本物の利用者様」に育てていただき、見守っていただき、心を教えていただき、誇りを与えていただく、そんな繰り返しで、利用者様ともに一歩ずつ歩んでいきます。
人の感情はコントロールできる、自分は専門知識という武器を持っている、こなしてさえいれば収入は途切れない、などなど。ついそういった慢心が首をもたげてきやすい条件下でもありますが、絶対に間違っています。自分自身もほぼ確実に利用者になるのです。

ご逝去の翌朝、泣いているスタッフの隣の席に座って管理者さんが慰めながら声をかけていました。そして最後の方、雑用の合間にちょっと聞こえちゃった会話。

管理者「あと6分で出動だから、あと6分泣いてていいからね」
スタッフ「うんうん、大丈夫です、あと6分」

なんだか、こういう風景にふれるたびに、訪問看護師さんってかっこいいな、うらやましいなって思います。「人間の本当の仕事」なんだなって思います。

そして、6分後。
「行ってきます!」
「行ってらっしゃい!」

いまにも雨の降り出しそうな空の下、いつもと変わらず元気に出動していきました。
もうすぐ梅雨ですね。

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